それっぽいデザイン(日本1):猫でもできるグラフィックデザイン89
「それっぽいデザイン」について考えています。今回からは世界の国や地域を想起できるグラフィックデザインや、それを構成する要素について考えます。まずはもっとも身近ながら、実は難しい「日本」について考えてみようと思います。
日本について、また日本らしいデザインについて考えるのはそれほど難しくはないように思えますが、そう簡単ではありません。確かに、日本人が、日本人に向けて、日本をイメージさせるデザインをするのであれば問題なさそうです。これは、日本人の中に「これが日本である」という共通の認識が存在するからです。一方で、外国人に向けて、特に外国に住む外国人に向けて日本を伝えるのは、なかなか骨の折れる作業です。
ここではあえて、この点を深く考えずに、「日本」をイメージさせると思うものをあげてみましょう。富士山、桜、寺社仏閣、着物、相撲、テレビゲーム、ポケモン、漫画、アニメ、電化製品、芸者、忍者、日の丸、侍、ちょんまげ、自動車、柔道、空手、黒澤明、KAWAII、禅などを思いつきました。難しさのひとつは、中国や韓国などぱっとみただけでは日本との違いがわかりにくい国との違いをどう伝えるのか、ということです。また、本当に日本のものであると知っているか、も難しいところです。たとえば「忍者」は知っていても、それが日本のものであると知っているかどうかはわかりません。
筆者が実際に会った人を例を挙げると、たとえばアニメ「ドラゴンボール」は日本のものであると認識されていましたが、「パワーパフガールズ」も日本のものであると考えている外国人がいました。また、「ヒュンダイ」を日本車だと思っている外国人もいます。さらに、現代でも着物を常用していると思っている外国人や、日本が東南アジアにあると思っている外国人にも会ったことがあります。同様に私達日本人も、「たぶんヨーロッパのどこか」「おそらくアジア」と思っているものが、本当はどこが発祥で、どのような歴史を持っているものなのか、詳しく知らないものも多いはずです。
こんな状況だからこそ、日本の文化を紹介したり、デザインに落とし込むときには、何が「日本」として認識されているか、しっかりと考える必要があります。同じ国の人であっても、性別、年代、地域によって持っている情報は大きく違うことも知っておかなければいけません。また、ターゲットをあいまいにして、総花的に何でもかんでも詰め込むと、まとまりがなく、デザインが難しくなることも覚えておきたいところです。