それっぽいデザイン(広告8):猫でもできるグラフィックデザイン88
「それっぽいデザイン」について考えています。広告としては地味な部類に入るかもしれない「墓地/霊園」の広告、「保険/共済」の広告、「人材募集/人材派遣」の広告をまとめてみてみましょう。
墓地や霊園の広告は、美しい自然の風景、控えめな価格表示、心に訴えかける文章、上質な印刷などなど、一見すると不動産の広告と似たような雰囲気があります。これは、不動産と同様、購入するのは一生に一度あるかないかで、価格も百万円単位であることなどが理由でしょう。
不動産広告との違いは、アピールするメリットを謳う範囲や利用する期間、情報の詳細度の違いです。不動産は住む人にむけて、概ね20年程度の利用を想定して、できるかぎり細かくメリットを謳います。一方、墓地や霊園は家族や親族などより広い範囲に向けて、できる限り長い期間について、ぼんやりとしたメリットを謳います。
保険や共済の折り込み広告は、保険料や掛け金の少なさと、万が一のときの補償の厚さをバランスよく見せることが重要です。ストーリー型の説明も効果的ですが、ともすると不安を煽りすぎたり、情報が多すぎることもあります。すべての保険の広告を真に受けていると、保険料は莫大なものになってしまいます。消費者はすでに情報過多に陥っており、その取捨選択を手伝うサービスが登場するなど、奇妙な状況になっています。
墓地や霊園の広告、保険や共済の広告にはいずれも青空の風景写真や、幸せそうな家族の写真が使われることが多いです。幸せな家族の安心を担うのが保険の役割で、その家族の歴史を紡ぐのが墓地や霊園なので、似たようなイメージとなるのは必然かもしれません。「死」や「病気」「事故」のようなネガティブなものを言葉に出さない方法であるとも言えそうです。
一方で、人材募集や人材派遣の広告は地味さや堅さの種類が異なります。これは、仕事というものに対する日本人の真面目さがあらわれていると推量します。働いて得られる給料について交渉したり、条件の希望を口に出すことが良いことではない、と思っている人は一定の割合存在しており、それを羅列する人材募集の広告は堅くなってしまうのかもしれません。
雇用する側はできるかぎり働きやすい職場であることをアピールしようとします。昨今は人材不足の背景もあり、90年代や00年代に比べるとかなりポップな体裁のデザインの広告も増えてきました。ただ、公的な就職支援/雇用促進のためのサービスである「ハローワーク」にまつわるデザインは、今でも硬いままです。