それっぽいデザイン(イントロダクション):猫でもできるグラフィックデザイン79
今回からは「それっぽいデザイン」と銘打って、デザインのコラムを書いていこうと思います。デザインのお仕事をする中では、仕事の流れの序盤、中盤、終盤のいずれの場面でも「例えるデザイン」をすることがたくさんあります。
序盤では、デザインの目的やゴールは一旦置いておいて、クライアントに「どんな雰囲気のデザインが好きですか?」と尋ねることがあります。中盤では、具体的なデザインを詰めていく際に、ベンチマークとなるデザインを聞いたりします。
このとき、デザイナーがどんどん例を挙げてくれると、クライアントは意を得たり、という感じでスムーズに話が進むはずです。逆に、クライアントに話をさせてばかりなうえに、クライアントが挙げた例を「それってどんなデザインでしたっけ?」と返しているようでは、クライアントの信頼を失うばかりです。
デザインの例えの引き出しが多ければ多いほど、目的にかなったデザインや、クライアントの意に沿ったデザイン、ユーザーの求めるデザインをすることができます。もちろん、完全に新しいデザインを創り上げてもよいのですが、それが求められることも、また求められたとしてもそれを実現できることも少ないのではないでしょうか。
例えばAppleのように、「流行りのデザイン」、ここでいう「例として用いられるデザイン」を作り出すことのできる企業もあります。1998年に発売された「iMac」は、パソコンらしくない独特な形状とボンダイブルーと呼ばれるカラーとで一世を風靡しました。この成功をみた多くのパソコンメーカーや家電製品メーカーは、透明プラスチックを採用した製品を沢山売り出しました。
Mac OS Xで採用した「アクア」と呼ばれる一連のデザインは、白背景をベースに、水や滴をイメージさせる装飾を採用し、これも多くのデザインに真似される事になりました。コンシューマーPCのもう一つの雄、Microsoftが2011年に発表したWindows 8では、「フラットデザイン」を採用しました。これも以降のデザインに大きく影響を与えています。
今回テーマにしようとしている「それっぽいデザイン」とは、「あのデザイン」といえば誰でもわかる、デザインの共通言語のような役割を果たすもの、と言い換えても良いかもしれません。「それっぽいデザイン」を構成する要素を分析し、何がそのデザイン足らしめているのかをまとめていければと思います。