アクションを促すデザイン(持つ):猫でもできるグラフィックデザイン77
アクションを促すデザインについて考えています。今回のアクションは「持つ」です。「持つ」はヒトがモノを持ち運ぶため、あるいはヒトがモノに掴まるために行う行為です。「持つ」を促すデザインについてみてみます。
まずは生活の中で「持つ」アクションを行う対象をいくつか挙げてみましょう。鞄の持ちて、車や家のドアノブ、電車のつり革、楽器、カメラ、ゴルフクラブ、杖、階段などの手すり、蛇口、車や自転車のハンドル、パソコンのマウス、スマートフォン、テレビのリモコンなどが頭に浮かびました。いずれも、手のひらを使って握りやすい形や大きさをしていることがわかります。
「持つ」アクションには、ヒトがモノを運んだり動かすためのものと、ヒトがモノを使うときのもの、またヒトがモノに掴まるためのものとがあるようです。先程の例では、「鞄の持ちて」「車や家のドアノブ」が運んだり動かすためのもの、「楽器」「カメラ」「ゴルフクラブ」「蛇口」「車や自転車のハンドル」「パソコンのマウス」「スマートフォン」「テレビのリモコン」が使うときのもの、「電車のつり革」「階段などの手すり」が掴まるためのものです。
上記の分類から漏れた「杖」は面白い道具です。ヒトは杖を運び動かし、杖を道具として使い、杖に掴まって体を支えます。たまたま例としてあげたのですが、持つアクションのすべてを取り入れている道具でした。
「持つ」を促すのに必要なデザインは、使い方によって異なります。というよりはむしろ、その見た目によって「自分が持てるもの」なのか「自分が掴まるもの」なのかを判断しているようです。
手で持つ部分が手に馴染みやすい形をしているのは共通している部分です。握りやすい大きさ、丸みを帯びた形、他から少し飛び出た、あるいは窪んだ形状、さらにある程度の硬さや丈夫さを想像させる素材感などが揃うと、「手で持って何かをする」ことと想像することができます。
この取っ手部分(=グリップ部分)がどこについているかによって、その後のアクションが異なります。自分より小さなモノであれば「持つ」、自分より大きなモノであれば「掴まる」を行うはずです。このとき、人間は体の筋肉の使い方をそれにあわせて調整するため、準備したアクションと期待したモノの挙動とが異なると、非常に驚くことになります。重そうなドアを引こうとしたらドアノブが外れた場合や、鞄を持ち上げようとしたら床に固定されていた場合などは、腕や腰を痛めてしまうことになるでしょう。