アクションを促すデザイン(避ける1):猫でもできるグラフィックデザイン75
引き続き、アクションや行動を促すデザインについて考えています。今回は少しカバーする範囲が広い気もしますが、「避ける」を促すデザインについて考察しようと思います。
普段の生活の中で「避ける」を促すデザインを意識することはそれほどないかもしれません。「避ける」アクションは本能的に行われることが多く、また経験によって避ける能力は磨かれ、いずれ無意識下での行動になっていきます。
本能で「避ける」を促すものといえば、例えばトゲのデザインであったり、ヘビやゴキブリに対する嫌悪感だったり、深い谷や高いビルの上で感じる恐怖感だったりと、その種類は多岐にわたります。一方で、水たまりを避けて歩いたり、バイオハザードマークや放射能マーク、ドクロマークなどを見るとその場を離れるアクションを起こそうとするのは「経験」によるもので、こちらもたくさん例を挙げることができるでしょう。
本能的に避けたいと思うもののデザインの成り立ちや根拠などについては、推測することしかできません。例えば、毒を持っている動物や植物は、派手で目立つデザインであることが多いです。これは毒を持っていることを周囲に示していると言われていますが、毒を持っていたからそんなデザインになったのか、そんなデザインだから毒を持てたのか、はたまた毒とそのデザインを持っていたから生存して来れたのかなど、推測することはできますが実際どうだったのかは誰にもわかりません。
経験に基づく「避ける」デザインは、2つに分けて考えることができます。ひとつは本人の経験から、それを避けようとするものです。水たまりに足を踏み込んで嫌な思いをした、犬に噛まれた、などは直接的な経験によるものでしょう。もうひとつは教育や学習によるものです。バイオハザードマークや放射能マークなどは、目で見ることや触ることが出来ないもの、あるいは短期間では体への影響が分かりにくいものなどに対して、危険なものを示すマークであると取り決めをして、世界的に用いられています。
興味深いことに、学習や教育によって避けることを促すデザインでは、デザインの由来が不確かな本能的に避けるを促すデザインを引用したり、直接用いたりしています。立入禁止の看板やバリケードテープには毒をもつ生物を想起させるような派手なデザインが用いられます。また、注意を促す際にはギザギザして棘を想起させるようなデザインが用いられたりします。