アクションを促すデザイン(差し込む3):猫でもできるグラフィックデザイン74
アクションを促すデザインについて考えています。日常生活で体験する「差し込む」の代表ともいえるUSB規格は、バージョンアップ毎に転送速度や利便性が向上しています。
2016年頃までは、Androidのスマートフォンの多くのモデルがmicro BタイプのUSB規格を採用していました。micro Bとtype-Aとを比較すると、プラグ自体の大きさや薄さがだけでなく、そもそもの形状が違います。micro Bは台形をしており、type-Aで面倒だった表裏の問題で悩む頻度が少なくなっています。とはいえ、type-Aに比べると見て分かりやすいので間違えづらくなった、というレベルのなので、差込口がキズだらけのスマホもそれなりにありました。
type-cは裏表の区別がなく、薄さもmicro Bと同程度なため、軽量化/薄型化が求められるスマホだけでなく、ノートパソコンなどでも多く採用されるようになりました。type-cの登場と時期を前後して、裏表を意識せずに使えるtype-Aや、磁力による接続に変換できるアダプターなどが登場し、USBを取り巻く環境はかなり改善されました。いずれもそれほど驚くような技術を使っているわけでもなく、今できるのであればなぜもっと早くに出来なかったのか、と多くの方が思ったはずです。
さて、「差し込む」アクションは物事をはじめる場面で使われることが多い、というような内容を書きました。これは常にそうであるわけではありません。スマホやアクションカメラなどの持ち運ぶガジェットは、充電するために使用を終わるタイミングで「差し込む」アクションを行います。視点を変えると「充電をはじめる」タイミングと考えることもできますが、充電中に本来の機能や要件(持ち運んで使えることなど)を満たさないことを考えると、終わりを意味する「差し込む」のひとつであると考えてもよさそうです。
筆者の考える、もっともスマートな「差し込む」アクションは、自動鉛筆削り器です。差込口の形は鉛筆サイズとなっており、ボールペンなど鉛筆より細いものの誤挿入は防げませんが、一番避けたい指の侵入を防いでくれます。
また、鉛筆を差し込むと同時に仕事がはじまり、あっという間にそれが完了するのもよいです。差し込むベクトルを作業に利用している設計も素晴らしいです。ついつい無駄に削ることを楽しんでしまいますが、高機能モデルであれば削り過ぎ防止機能もついています。