アクションを促すデザイン(差し込む2):猫でもできるグラフィックデザイン73
「差し込む」アクションを促すデザインについてみています。パソコンなどのUSB(Universal Serial Bus)はもっとも身近に「差し込む」行為を体験している箇所のひとつですが、USBにはメリットもあればデメリットもあります。
USBの一番のメリットは、やはりその汎用性です。USB登場以前、パソコンと周辺機器との接続規格はメーカーや年代によって様々でしたが、今ではほとんどの機器がUSB規格を採用するようになりました。これにより、古いパソコンで使っていた周辺機器が新しいパソコンでも使えたり、データを保存したハードディスクやフラッシュドライブを持ち歩けばわざわざ重いパソコンを運ばなくてもよくなりました。
また「ホットプラグ」と呼ばれる、パソコンを起動している最中に抜き差しすることができるのもUSBの長所のひとつです。それまでの周辺機器では一度電源を落として、PCの起動とともに認識させる必要がありました。USB規格は周辺機器の利用のハードルを大きく下げたといえます。
一方でデメリットも存在します。ひとつは、規格の多さです。USBは多くの専門家が集まり、きちんと設計された規格ですが、社会からの要求はそれをはるかに超えており、それに合わせようとすると規格の数を増やさざるを得ませんでした。USB、と一口に言っても、現在はたくさんの大きさや規格の存在しています。転送速度の違いで「1.1」「2.0」「3.0」「3.1」にわけられ、形の違いで「Type-A」「Type-B」「3.0 Type-B」「Type-C」「mini A」「mini B」「Micro A」「Micro B」「3.0 Micro B」にわけられます。
多くのユーザーは購入時や利用時にその規格を意識すれば済む話ではありますが、理解が足りないと前述の「汎用性」のメリットを大きく損なったり、せっかくの高速転送を享受できなかったりします。
USB規格において、おそらく一番の短所は「USB Type-Aの裏表がわかりにくい」ことではないでしょうか。「差し込む1」で書いたように、差し込むアクションでは一意性のあるデザインを使うことで使用できる組み合わせを制限していますが、「USB Type-A」では外から見える矩形の枠の中に外から見えない直方体の突起があり、差し込む際には裏表(あるいは上下)を意識しなければいけません。
差し込んで入らなかったからひっくり返して、それでも入らなくて、もう一度戻しても入らなくて、目で確認したら結局もともとの方向が正解だった……というような経験は誰にでもあるのではないでしょうか。周辺機器との接合部分が本体の見えにくいところについていることも多く、手探りでUSB Type-Aを差し込むのはななか至難の技と言わざるを得ません。より新しい「USB Type-C」などではこの問題が見事に解決されています。