アクションを促すデザイン(かける):猫でもできるグラフィックデザイン69
アクションを促すためのデザインについて考えています。今回は「かける」について考えます。「のせる」と同様、本来かけるためのものではないところにかけられてしまうことの多い、見た目で誘発しやすいアクションのひとつです。
今回テーマとしている「かける」は漢字では「掛ける」です。前回の「のせる」に近い意味があったり、掛け算の意味があったりと、この字を使うアクションはたくさんありますが、英語でいうところの「hang」や「hook」が表す行為について考えます。厳密には「hang」と「hook」にも違いがありますが、下に落ちようとするものを全体ではなく一部に力を加えて、上に引っ張って支えるイメージです。
「hook」はそのまま、吊り下げる道具の固有名詞になっています。鍵状の金具や釣り針なども「フック」といわれます。これらのイメージは多くの方に深く浸透しており、その形をしたものが部屋にあれば荷物などを掛けようとするでしょう。部屋の荷物掛けでいうと、掛けるところは必ずしも鍵状である必要はなく、例えばドアノブなどに衣類や鞄を掛けたことのある方は多いのではないでしょうか。
また、オフィスチェアの背もたれにジャケットを掛けたことのある方も多いでしょう。当然のことですが背もたれは肩と同じくらいの幅なので、脱いだジャケットをかけておくにはちょうどよい場所です。実際に使ってみると肩幅が微妙に合っていなかったり、襟が潰れたりするので最善の方法ではありません。これに対応するために、衣類用のハンガーが取り付けられるオフィスチェアーも販売されています。
棒が部屋に渡されていると、物干し竿として使いたくなります。ビジネスホテルや旅館などで、タオルを干す場所に困ったことがある方も多いでしょう。大抵はシャワーカーテンのレールや扉のフック、部屋に設置されている椅子などを工夫して物干しとしますが、気の利いた宿では物干し用の紐や大きめのタオルハンガーを準備してくれています。
同様に、ベランダで洗濯物を干しているときに、干す場所がなくてエアコンの室外機などにハンガーを掛けたことのある人もおられるでしょう。専用の道具がない場合に、代替として選ぶ道具と専用の道具との共通点を見出すことがアクションを促すデザインを見つけるヒントです。
「のせる」と同様、「かける」の場合も、素材などから耐久性や安定感を判断してかけられるかどうかを判断します。