アクションを促すデザイン(のせる2):猫でもできるグラフィックデザイン68
引き続き「のせる」を促すデザインについてです。「のせる」を実現するために周囲よりも高さを設けると、必然的に不安定になってしまいます。これに安定感をもたせるため、いろいろな工夫がなされます。
低い場所でもそうですが、特に高い場所では平らな面をどれだけつくれるかが安定感のポイントとなります。「平ら」と言っても凸凹が無いだけでなく、平行である必要があります。ベースとなる地面に平行というよりは、重力の方向と垂直な面を作るイメージです。このようにして作った面は、ものを置いたときに転がったり落ちたりしにくくなるので、ものをのせてみようという気持ちが喚起されます。
また、使いやすい位置にある、というのもポイントです。手が届く位置、足がのせられる位置、荷物がのせられる位置などなど、動きの中で便利に使える位置にあることがのせるを促すデザインにつながります。たとえば、買い物をしてレジで支払いをする際、カバンを少し置いておける小さな棚を設置しているお店があります。店の大小を問わず、荷物を置くための棚を後付けしている店舗は、ユーザーの立場に立った改善ができる良いお店ではないでしょうか。
ある程度の面積があることものせるを促す条件のひとつです。面積があることは安定感につながります。これを経験的に学んでいるため、桟(さん)のように細く面積が狭い部分はいくら平らであってもモノをのせることはありません。一方で、上から見た面積が狭くても、丸みを帯びている場合は足や腰をのせられる場所だと認識します。カウンターの足元にある足置きや、電車の入口付近に設置される腰掛けなどがそれにあたります。
逆に、本来はのせるためのものとしてデザインされていないにもかかわらず、「ちょうどよい場所」にあるためにその目的で使われてしまうものもたくさんあります。ソファーの前に置いたテーブルに足を置いてしまった経験がある人は多いでしょう。また、待ち時間の長い信号の周囲にあって、腰の高さにあるあらゆるものは信号待ちをする人の腰掛けになっています。また、公共の場所にあるトイレに設置されたトイレットペーパーホルダーには、スマホを置いたり火のついたタバコを置いたりされるようです。
のせるものの重さには制限があることが多いですが、この重さのだいたいの限界も我々は想像しています。素材や形、支えの太さ、吊っている部品の取り付け具合、平らな面の厚みなどを情報を総合して判断しています。これらも、のせるを促すデザインの一部と言えるでしょう。