アクションを促すデザイン(のせる1):猫でもできるグラフィックデザイン67
今回から「のせる」を促すデザインについてです。周りに比べて少し高い位置にものを置くだけで、いろいろな意味や効果が生まれます。ヒトやモノを「のせる」デザインについて考えます。
日常生活の中で使われる「のせる」には、二種類の漢字があてられています。ひとつは「乗せる」で、もうひとつは「載せる」です。もともとの漢字としての意味はほとんど同じようですが、現在の日本語では「乗せる」は人や動物の場合、「載せる」は物や写真、文章などの場合に使われることが多いようです。今回は人や動物だけでなく、物も対象にしていますので、漢字は使わず書いています。
まずは物や人を高い位置に置くメリットを考えましょう。部屋の中では、机やテーブル、椅子などでそれを実現しています。また、テレビでも食器でも置時計でもなんでも、あらゆるものが床よりも高いところに置かれています。これは、高い位置に置くと手に届きやすいことや使いやすいこと、衛生的であることなどのメリットがあるからでしょう。学校などの公共施設が高所に作られるのは、河の氾濫など万が一の際にも安全であるためです。高い位置は低い位置に比べて相対的に安全である、という前提もありそうです。
部屋のロフトや電車の網棚などのように、空間の上部に何かをのせる場合は、空間の有効活用側面もありそうです。この視点でいえば、本棚やタンス、冷蔵庫などになぜ背の高いものが多いのかを説明できそうです。
スポーツ大会の表彰台、あるいは神棚などのように、讃えるためや祀るために高い位置にのせる場合もあります。古今東西、権力者が高い位置にいるイメージであるのは、高いところから世の中を見渡すため、あるいは自分の意思を民衆に知らしめるのに便利だからでしょう。表彰台にしろ権力の誇示にしろ、そのモノが持つ意味的な位置と物理的な位置とを一致させるのは、至って自然なことのように思います。
高い位置を作ろうとすると、それ以外の低い位置と比べると狭くなってしまうことが多く、それ故に安定感のない場所となってしまいます。前述したように、高い場所は大切なモノやヒトをのせるためのものなのに、周りよりも不安定な状態になってしまうのは問題がありそうです。このリスクをできる限り減らすよう、デザインや使い方で様々な工夫が取り入れられていますが、その工夫がそのまま「のせる」を促すためのデザイン的な特徴となっています。次回、その特徴をみていきます。