アクションを促すデザイン(アフォーダンスとシグニフィア):猫でもできるグラフィックデザイン59
「アフォーダンス」や「シグニフィア」という言葉をご存知でしょうか。デザインを勉強したことのある方なら耳にしたことがあるかもしれません。歴史的な経緯や使う場面によって意味が多少変わりますが、いずれも「使い方や性質がわかる視覚的な特徴」という意味で用いられます。
いくつか例を挙げてみましょう。例えばテレビのリモコンは、手に握ってボタンを押して使うことを想起させる大きさと形です。また、オフィスにあるシュレッダーは紙のように薄型のものを差し込むことを促す形をしています。
一方で、これは本来の目的とは異なりますが、信号機のそばにある車両進入防止の杭は、信号待ちの人が腰を掛けてひと休みするのに使われます。同様に、ドアノブに荷物をかけたり、椅子の背もたれにジャケットを掛けたりすることもあります。
このように、我々はデザインから使い方や意味を想像して利用したり、デザイナーの想定外の使い方をしたりします。
「何も考えずに使える道具」は、道具として優れているだけでなく、ある種の芸術的な魅力を持つことがあります。いわゆる機能美と呼ばれるもので、長年の試行錯誤や利用者の工夫、デザイナーのアイデアからまれに生まれることがあります。
面白いことに、アフォーダンスやシグニフィアは現実だけの話ではありません。バーチャルの世界である画面の中でも、というよりむしろ画面の中のほうが、アクションを促すためのデザインが積極的に取り入れられています。これは、表現力に制限があることが主な理由でしょう。
これを極めたのがテレビゲームです。近年のゲームではほぼリアルな映像を利用できますので、さもありなん、という感じですかが、およそ30年くらい前、ファミコンが登場する前後のゲームでも「そのようにみえる」ためのデザインの工夫が沢山なされてきました。
例として、ファミコン時代にもっとも売れたゲームのひとつである「スーパーマリオブラザーズ」についてみてみましょう。このゲームではプレーヤーが敵を踏みつけて倒すことができますが、中には踏んでもやっつけられない敵がいます。甲羅にトゲのついた「トゲゾー」や、ヘルメットを被っている「メット」などです。この様な敵が登場することで、ゲームのバランスやエンターテイメント性が格段に高まりました。
これまで紹介したような、デザインでアクションを促すための工夫や、デザインによって想起される性質について考察していければと思います。