デザインの練習(名刺のデザイン4):猫でもできるグラフィックデザイン55
名刺のデザインについて考えています。名刺は近年のビジネスシーンでは徐々に姿を消しつつある紙を使ったメディアのひとつです。だからこそ、紙の厚みや素材にこだわれば、個人や企業のブランディングに効果があるはずです。
普段あまり意識することはありませんが、私達の生活の中にはいろいろな種類の紙があふれています。たとえば、新聞紙と折込広告の紙の違い。これは誰でもわかりますが、これまで受け取った名刺の「紙」について、考えてみたことがありますでしょうか。
名刺に使われる標準的な紙の厚さは、180kg〜220kgくらいです。この数字は、原紙が1,000枚でどれくらいの重さになるのか、ということなので、数字が大きければ大きいほど、厚みのある紙ということです。「標準的」として具体的な厚みを示しましたが、180kgで作った名刺と220kgで作った名刺とを実際に比べてみると、180kgはけっこう薄く感じるはずです。
薄い名刺ではその役割を果たせないわけではないのですが、紙の厚さで無意識に信頼感のようなものを測っている方もいるようです。また、薄すぎる名刺は机の上に置いたときに取り上げにくかったり、名刺入れで他の名刺にくっついたりすることもあります。可能であれば、より厚みのある名刺の方が良さそうです。
昨今は交換した名刺を会社内で共有することも多く、スキャナで取り込んだり、クラウドサービスに一括登録することも増えています。これを考えると、厚み=信頼感だからといって、分厚くすれば良い、と言うものでもなさそうです。同じ理由で、金属やプラスチックのような変わった素材の名刺も避けたほうがよいかもしれません。とはいえ、名刺交換は相手にインパクトを与えられる数少ない機会です。凝った名刺で自分を印象づけるのも悪くない作戦です。
筆者が今まで受け取った、印象に残っている名刺といえば、A5サイズの名刺や、蛍光色の名刺、香り付きの名刺などがあります。それぞれ、新規参入しづらい業界で新しく会社を作り成長させている社長さん、突飛なアイデアや楽しませる企画が得意なデザイナーさん、日本有数の繁華街で経営しているラウンジのママさんの名刺です。A5サイズの名刺では大きさと紙質に、蛍光色の名刺では入手しにくい原紙と印刷方法に、香り付きの名刺は大きさと紙質、そして毎回香りをつける手間に工夫とアイデアがみられます。
名刺にこだわらなくてはいけないというのではなく、いろいろこだわって仕事をしていると、必然的に名刺にもこだわりがうまれてくる、という感じのように思われます。すくなくとも、薄くてツヤツヤした、そっけない名刺では印象に残らないのは間違いなさそうです。