デザインの練習(信号機のデザイン5):猫でもできるグラフィックデザイン41
引き続き信号機のデザインについてです。使う人や環境の変化にデザインで対応する方法を追っています。色覚多様性の方への対応として、赤信号にバツ印を加えることで対応する方法を紹介しました。
色に意味をもたせることは、グラフィックデザインやインターフェースデザインでもよく行われます。ただ、ユニーバーサルデザインの視点では不充分である場合もあることがわかりました。ユニバーサルデザインとは、文化や言語、性別や能力の違いを問わずに利用できるデザインです。信号機が用いている色の違いによる信号は、ユニバーサルデザインとはいえません。また、前回紹介した色覚多様性に対する対応で採用されたバツ印も、国や地域によっては日本人が思うような「停止」や「否定」の意味ではないことがあるでしょう。信号機は各信号の色だけではなく、形を組みあわせて信号とするのが良いかもしれません。形に対する意味も文化によって異なりますので、世界的なルールとして決めることができれば、ユニバーサルデザインに一歩近づけることができそうです。
次に考えるのは、環境の変化に対するデザインの工夫についてです。このコラムシリーズの最初に、降雪のある地域の信号機についてとりあげました。雪は信号機の上に積もって負荷をかけたり、ランプ面を覆って信号が見えなくなってしまったりするため、取り付け方や形、発熱などの工夫が必要でした。
信号機の一番の敵は、太陽光です。電球であってもLEDであっても、太陽光にさらされると光っているのかどうかがわからなくなってしまいます。信号機は屋外に設置するので、この問題を解決しなければ交通安全に大きな影響があります。もっとも簡単な方法は問題の根源である太陽の光を遮ることです。ただ、信号自体は歩行者や車両からしっかりと見えなくてはいけません。信号機はこれを両立させるために、筒状、あるいは箱状のフードを採用しています。太陽の方向と信号の向きなどを考慮して、すべての信号機のフードの長さや角度が調整されています。
信号機のフードには、太陽光を遮断するよりも重要な役割があります。それは見える範囲を制限することです。複雑に入り組んだ交差点では、歩行者や車両が従うべき信号を見誤らないように、信号の見える範囲を制限しなければいけません。この調整は前述の太陽光の遮光と同時に考慮されるべきで、この二つを同時に成し遂げるのはなかなか難しいようです。