デザインの練習(信号機のデザイン4):猫でもできるグラフィックデザイン40
信号機のデザインについて考察しています。前回、降雪の多い地域での信号機について触れましたが、環境の変化、使う人の変化にデザインでどのように対応しているかをもう少し深く掘り下げてみます。
信号機が話題にあがると(そんなことは稀かもしれませんが)、誰かが「青信号の色は緑ではないのか?」という指摘をすることがあります。そういわれると、確かに青というよりは緑に近い色のような気がします。これは電球自体は青であるにも関わらず、角度や距離によって緑に見えてしまう、という類ものではありません。
青信号の名前は、日本で最初に信号が登場したときの紹介のされ方に由来するそうです。法令では「緑信号」となっていたものの、「青信号」の名前が一気に広まってしまったため、法令を変更する事態にまでなりました。日本語ではもともと緑を指して「青」と呼ぶことが多いため、それほど違和感はありませんが、おかしいと感じる人もいるでしょう。
クオリア、という言葉があります。クオリアについてはそれほど筆者の理解も深くはないのですが、一言で言うと主観として体験する感覚、とでもいえるでしょうか。例えば赤いものをみると「これは赤い」と感じますが、これがクオリアの一例です。これが他人と同じかどうかは誰にも証明することができません。自分が思っている赤と、他人が思っている赤は違うかもしれないのです。
閑話休題。信号の色は、果たして誰にでもきちんと同じように見えているのでしょうか。緑色の信号を青色と呼ぶのとは少し違いますが、赤と黄色の区別がつかない人や、そもそも色が見えていない人がいるかもしれません。
「色覚多様性」をご存知でしょうか。色覚多様性は、以前は「色覚異常」と呼ばれていました。眼科学によって定義された「正常色覚」を持っているかどうかをあらわすものですが、男性で5%〜10%と、多くの方が色覚多様性であることがわかっています。色覚多様性の場合、信号の色をきちんと区別できない場合もあるでしょう。
色覚多様性の方は、電球を使った信号機が一般的だった頃は透明感の違いや明るさの違いをもとに信号の色を判断していたそうですが、LEDではこれらの違いがないため、信号がわかりにくいことが問題となっていました。信号機の製造販売で知られているコイト電工株式会社は、九州産業大学と協力して赤信号に色覚多様性の人のみがみえる「バツ印」を入れ、2011年のグッドデザイン賞を受賞しました。