デザインの練習(テレビのリモコン4):猫でもできるグラフィックデザイン32
今回もテレビのリモコンについての考察の続きです。ボタン数の多いテレビのリモコンと、ボタン数の少ない初代Apple TVのリモコンとを比べていました。Apple TVでは一つの番組を観るために、非常に複雑な操作が必要ですが、それでも多くのユーザーに利用されています。その理由を探ります。
テレビでは、地上波に限ると10に満たないプログラムからひとつを選んでいたのに対して、「Amazon Prime Video」では数万存在するプログラムからひとつを選んでいます。この違いを考えると、一見複雑と思われるApple TVの操作が、相対的にはそこまで複雑でもないことに気がつくはずです。
以前、スマホやPCは少ないボタンで複雑な操作ができる、というようなことを書きましたが、Apple TVのリモコンは、登場した時期を考えるとスマホやPCの操作感、あるいは利用者の経験を前提にしているところは大いにあるとは思います。とはいえ、6つのボタンだけで各種設定を行わせたり、数万のプログラムからひとつのプログラムを選択し、再生させたりしているのはさすがです。
Apple TVの操作の流れとしては、プログラムを徐々に絞り込んでいくイメージです。「利用するアプリは?」「観たいジャンルは?」「観たいプログラムは?」「観たい放送回は?」とユーザーに尋ねながら、ひとつのプログラムを特定していきます。これはちょうど、テレビゲームのRPGで採用されている「コマンド選択式」のインターフェースに似ています。「どうする?→どうぐ」「だれの?→ゆうしゃ」「なにを?→やくそう」という流れと同じですね。
もちろん、Apple TVは視聴する時間が自由であったり、テレビに比べてがプログラムの数が多いことは、ボタン一つで簡単に視聴できるテレビの優位性を覆し、一見ややこしいUIがユーザーに受け入れられている最大の理由だと推量します。
前回、テレビのリモコンは物理的なスイッチと、視覚的なユーザーインターフェイスとわ兼ねている、と説明しました。Apple TVでは、リモコンをシンプルにするかわりに、画面でのUIに力を入れています。画面上では、全ての指示に上下左右ボタンでたどり着くことができます。また、より良いインターフェイスを試したい場合や、現在のインターフェイスが良くない場合などには、ソフトウェアをアップデートすることで簡単にUIを刷新できるのも利点です。