良いデザインと悪いデザイン20:猫でもできるグラフィックデザイン23
今回のデザインキーワードは「輪郭線バイアス」です。輪郭線バイアスとは、角があるものよりも丸いものの方が魅力的に感じる傾向のことです。角があるものと角がないものを対比させながら、その傾向について考えてみます。
ちょっと極端な例になりますが、角ありの代表格として刃物を、角なしの代表格としてボールを想像してみてください。刃物は威圧や恐怖、刺激を想像させますが、ボールは楽しさや優しさ、柔らかさを想像させます。これが輪郭線バイアスそのものです。これを証明するために、丸くて印象の強いもの、角があって印象の柔らかいものをいくつか考えてみてください。なかなか難しいのではないでしょうか。
さらに例を挙げてみましょう。たとえば「男性と女性」を比較すると、男性はゴツゴツと角張った肉体を持ち、女性は丸く柔らかな肉体を持っています。どちらもそれぞれの魅力がありますが、受ける印象の違いは明らかです。
輪郭線バイアスの話をする際、例としてよく取り上げられるのが「iMac」です。1998年にApple社が市場に投入したデスクトップパソコン「iMac」は、その魅力的なデザインで人気を集めました。それまでのパソコンは白色やベージュ色で、直方体の筐体のものばかりでした。iMacは曲線とスケルトンとにこだわったデザインとすることで、これまでパソコンに興味のなかった人や、Windowsのパソコンに抵抗感があった人などを取り込み、それ以降のApple社の躍進のきっかけとなりました。
木工や金工では、角を落とすための様々な工夫がなされます。デザイン問して丸みのあるものにできればベストなのですが、丸みのあるデザインは制作に手間がかかるため、工業製品は加工が容易な直線的なデザインとなることが多いです。その間をとる技術として「面取り」があります。角を落とることで、手触りを良くしたり、うっかりぶつけたり落としたりした時のリスクを減らします。
たとえ角があるものでも、角度の大小で与える印象が異なります。90度より小さい(鋭角)ものではより強い印象に、90度よりも大きい(鈍角)ものではその印象は円に近くなります。
角のあるかっちりとしたデザインは、高級感やモダン、シンプルなどの印象を与えます。一方で丸みを帯びたデザインは親しみやすさや懐かしさ、かわいらしい印象を与えます。輪郭線バイアスでは丸みを帯びたほうが魅力的とされていますが、角があると絶対ダメ、というわけではありません。見た人が受ける印象が大きく異なりますので、目的によって使い分けましょう。