良いデザインと悪いデザイン18:猫でもできるグラフィックデザイン21
今回のデザインのキーワードは「テクスチャ」です。英語で「texture」、日本語では色々な意味がありますが、「手触り」「きめ」「風合い」「織り方」などが妥当ではないかと思います。デザインにおけるテクスチャについて考えました。
連日掲載しているこのコラムでは「グラフィックデザイン」をテーマにしていますし、画面や紙面でのグラフィックデザインに興味がある方を対象としていますので、それ以外のモノづくりにおけるデザインについては関係がないように感じられるかもしれません。ただ、今回の「テクスチャ」については生活の中でたくさん実感しているデザイン要素のひとつです。
たとえば、みなさんが身につけておられる衣服の素材です。綿、シルク、毛、ナイロンなどいろいろな素材を、多様な織り方で布にし、それを裁断/縫製することで一着の服が出来上がっています。おそらく、服のデザイナーさんは形のデザインだけでなく、もっともふさわしい素材を選ぶところまで考えておられるはずです。また我々が服を購入する時は、サイズや見た目のデザイン以外に、素材の手触りや風合いをわざわざチェックするはずです。
もうひとつ例を挙げましょう。今いる部屋や車内の「壁」をみてください。部屋には壁紙が施されていることが多いですが、その壁紙の表面をよく見るとこまかな凹凸が施されているはずです。お金をかけている部屋では布の壁紙だったり、内装用タイルなどでさらに質感の高いものが施工されているはずです。また、車内でも、普及車はプラスチックや不織布のような素材が多いですが、高級車では革や木材など質感の高い素材が使われています。
このように、結構身近に「テクスチャの違い」を意識している場面は多いです。また、テクスチャの違いで印象が変わることも知っているはずです。ところが、いざ画面や紙面のデザインをしようとすると、とくに画面のグラフィクデザインではテクスチャを忘れてしまいがちです。紙のデザインでは使用する紙の厚みや手触りを意識しながら、あるいはその素材感も踏まえてデザインすることができます。画面では、たとえスマートフォンやタブレットであっても手で触れるのはガラス面なので、実質的な触感の表現は難しくなります。
そこで、布や紙など様々な素材を触ることで培われてきた、みる人の経験を利用します。毛織物の織目を画面上で再現すればあたたかさを、大理石の艶を再現すれば冷たさや高級感を表現することができます。そこまで具体的でリアルなテクスチャでなくとも、ちょっと影を落としたり、凹凸をつけるだけでもデザインの完成度は何割か上昇するはずです。制作したデザインがなにか物足りない時は、テクスチャの使用や変更を試してみてください。