良いデザインと悪いデザイン16:猫でもできるグラフィックデザイン19
今回の心地よいデザインのキーワードは「ベビーフェイス効果」です。幼い子供の顔や、犬や猫などの動物の顔には人の心を引きつける魅力があります。ベビーフェイス効果について考えます。
犬や猫は愛玩動物として世界中で愛されています。これは、その大きさや寿命、気質や行動などなど、いろいろな理由で人間と一緒に暮らすのにふさわしいと判断された結果だと思いますが、一番の理由は「かわいい」からではないでしょうか。もちろん、個性的な顔や姿の犬や猫もいますが、ここでは一般的に「犬」や「猫」として誰もが頭に思い浮かべるものです。
犬や猫の写真をみると、癒やしの効果があることは研究で証明されていますが、そんな裏付けがなくとも愛玩動物には「かわいい!」となってしまう魅力があります。職場ではキリッとしているイメージがあるおじさん/おばさんが、自宅のペットの前では赤ちゃん言葉を使いながらメロメロになっていることは、ペットを飼っている人の中では暗黙の了解ではないでしょうか。これが子犬や子猫だとしたら、その効果は2倍、4倍では収まらないことでしょう。
子犬や子猫は、目が顔に占める比率や耳の位置が成犬や成猫とは異なります。耳がやや横についていたり、鼻が短かったり、目の比率が大きかったりなどの特徴がみられます。人間も例に漏れずそうであり、たとえばこの文章を読んでいる方の子供の頃の写真と今の写真とを見れば「どちらがかわいいか」は明白でしょう。
このように、特に哺乳類で顕著に見られる、幼年期の外観が魅力的なことを「ベビーフェイス効果」といいます。これは、哺乳類は寿命が長く、独り立ちするまではそれなりの時間がかかるため、その間同種から、時には異種からも保護してもらえるように、愛される外観になっているのでは、と推論されています。
保護されやすいのであれば大人になっても魅力的な外観のままでもいいような気がしますが、成長において次第に崩れていくのが摂理です。まれに、子どものような外観のまま大人になる事があり、たとえばアイドルなどはそれを活かした仕事かもしれません。また人種によってもその変化の度合いは異なり、日本人などアジア人は相対的に顔が幼いまま成人になります。
生物としては幼い姿が魅力的であるのは理解できるのですが、現代の社会ではどちらかといいうと経験的、文化的に求められる「年相応」の外観があるようです。若く見られるのを喜んでいると「頼りない」と思われたり、老けていることを気にしているのに「つまらなさそう」と評価されたり、なかなか難しいものです。