良いデザインと悪いデザイン9:猫でもできるグラフィックデザイン12
今回のキーワードは「コントラスト」です。コントラストは英語の「contrast」に由来する言葉です。日本語では「対比」ですが、メリハリ、強弱などと言い換えるとしっくりくるかもしれません。デザインにおけるコントラストについて考えます。
「contrast」の訳語である対比、対照という言葉からわかるように、コントラストは比べる対象があってはじめて評価することができます。例えば、白はもっとも明るい色ですが、白の上に同じ白で図形を描いてもコントラストが高いとは言えません。明度が高い白には、明度の低い黒を組み合わせるとコントラストが高くなります。また、鮮やかさが同じ色を組み合わせてもコントラストがある状態ではありません。鮮やかさ(彩度)に明確な差をつけると、コントラストをつくることができます。
色や明るさのコントラストは普段の生活の中でも使う言葉なので、直感的にわかりやすいと思います。コントラストは、2つのモノを比べて差がある時に生まれるので、その基準や視点はなんでも良いです。色や明るさはもちろんですが、形を由来にしたものもあれば、質感や位置、動きなどでもコントラストを作ることができます。中にはそんなものまで?という要素もありますので、それぞれみていきましょう。
まずは「大きさ」の違いです。大きさが異なるものの間にはコントラストが生まれます。街を歩いていて、背の高さが極端に異なる二人組に注目してしまうのはこの効果によるものでしょう。デザインでは、多くの場合相対的に大きい方が注目させたいものになるはずです。文書デザインではこれを利用して「見出し」を作ったりします。
文書デザインの流れで言うと、「フォントの違い」でもコントラストをつけることができます。フォントの大カテゴリーである「セリフ体(文字の端に小さな飾りのあるフォント)」と「サンセリフ体(文字の端に小さな飾りのないフォント)」をあわせて使う場合などがそれにあたります。日本語では「明朝体」と「ゴシック体」との違いを考えるとわかりやすいでしょう。もちろん、同じ系統のフォントであってもその種類が違うとコントラストが生まれます。
フォントには太さ(ウェイト)の違いやスタイルの違いがあります。太字、標準、細字を備えるものや、欧文フォントでは斜体があるものもあります。ウェイトやスタイルの違いでも、コントラストを作ることはできるでしょう。
次回のコラムでは、図形的、視覚的なコントラストの作り方について考えていきます。