良いデザインと悪いデザイン8:猫でもできるグラフィックデザイン11
今回のキーワードは「近接」です。これは心地よさもさることながら、情報の伝達がうまく行くかどうかに大きく影響する要素です。整列がうまくできるようになったら、次は近接を意識できると良いデザインに一歩近づくことができるでしょう。
デザイン、とくにグラフィックデザインの目的は、情報の伝達を補助すること、あるいは情報伝達そのものであると考えることができます。ひとつの画面や紙面の上には、伝えたい一連の情報が詰め込まれています。
ここで「情報」の定義について考えておきましょう。まずは情報と同じように用いられる可能性がある「データ」や「知識」、「知恵」との違いに着目してみます。「データ」は、「事象や概念などの現象や性質を一定の条件のもとで整頓し、文字や数値といった形式で表現したもの」です。これを元に、「情報」とは「データのうち、意思決定に用いられたものや知識体系への事実追加、あるいは修正に役立った物」とされています。さらに、「知識」は「概念や手法などのように特定の用途に役立つよう体系的に組み立てられた情報の集合体」、「知恵」は「知識を実践で昇華させた仮説、または知識によって得られる物事を理解する能力」となります。
データが知恵にまでステップアップしていくものとして説明していますが、知恵も情報のひとつとみなしたり、データも情報の一部であると考える場合もあります。筆者がいちばん好きな情報の定義は「知っているのと知っていないのとで結果が異なるもの」というものです。
このような定義を頭に入れたうえで、いろいろな情報を分解して考えるために、情報の塊をどこまで小さくすることができるかを考えます。たとえば弊社の住所は「大阪府大阪市中央区安土町1-7-20新トヤマビル2F」ですが、「都道府県:大阪府」「市町村:大阪市中央区」「町名と番地:安土町1-7-20」「建物名:新トヤマビル2F」と分けることができます。情報の体を保ちながら、出来る限り小さくしたものを「情報のユニット(最小単位)」とします。
情報のユニットはその属性ごとに組み合わせながら使用されますが、そうしてできた情報のブロックは他のブロックとは異なることを示さなければいけません。ここで、「近接」の考え方が有効になります。同じ属性を持っている情報のユニットは、物理的な距離を近く配置しなければいけません。
逆に言うと、人がデザインを見る時は、近くに置かれた情報ユニットの集合、つまり情報のブロックには同じ属性を持っている情報が含まれていると考えます。この原則を崩すと、情報が伝わりにくかったり、正しく伝わらなかったりします。あたりまえのルールではありますが、どの情報とどの情報をまとめるべきなのかを考えながらデザインすることが大切です。